増田宗昭

それまでテレビには絶対に出なかったのだが、初めて出た。すると、それを観た佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長が代官山の蔦屋書店にいらして、「これをぜひ武雄につくって欲しい」とおっしゃる。だから「人口5万人なんていうところでは出来ない」と申しあげたのだが、「いや、もう決めたんだ」と。いきなり市議会も通さず記者会見を開いた。 で、武雄にあった既存の図書館を全て見直して、現在のような形にした。年中無休で夜も開いている。朝も早くから開いていて、コーヒーを飲むことも出来るし、雑誌も購入出来る。また、本の分類はすべて生活分類だ。図書館法の分類ではなくて、代官山 蔦屋書店でやっているような身近な分類。人口5万人という地域で、近所は山だらけ。隣には高校がある。高校生は自習室でスターバックスのコーヒーを飲みながら勉強出来る。Wi-Fiも完備しているし、20万冊の本はすべて無料だ。映画や音楽もたくさんあり、当然、Tポイントも使える。 結果として、僕らがお手伝いをする前は1日800人前後だった来館者が、なんと4600人に増えた。「人口5万人の市でこんなに来て大丈夫か? 犬や猫までカウントしているのか?」というほど来るようになった。代官山 蔦屋書店を知る方々も、この図書館に来ると、皆、「代官山よりもすごい」と言う。それはそうだ。20万冊が無料で、しかもそれらが代官山 蔦屋書店と同じ分類で並んでいる。料理やら旅行やら、もうすさまじい量だ。その結果として、武雄市でTカードを持っている人は41%から一気に49%へ上がった。このままいくと沖縄や寒川町も追い抜く勢いだ。 今は行政の方があちこちから毎日見学にいらしていて、「うちでもやってくれ」「見に来てくれ」と、行列をつくっている状態だ。僕らがやるとコストが下がるというのもある。すべてセルフPOSだし、本のレンタル屋だ。要するに、図書館なんてものはないと。名前は図書館だが、本のレンタル屋だ。